襖・障子・網戸の張替専門の店舗運営を行う現役金沢屋オーナーに金沢屋を選んだ理由をインタビュー

金沢屋 亀岡店

京都府亀岡市吉川町
2015年6月 開業

インタビュー時期:2019年5月

金沢屋を始める前は、なにをしていたのですか?

色々な仕事をしてきましたけど、主にはソフト開発です。プログラマーやシステムエンジニアとして、企業の請求業務や受注業務などの業務システムを開発していました。一時は、会社の中でデータ処理を行う「電算室」という部署にもいました。

サラリーマンでうまくいったので、独立してフリーランスとして活動していたんですけど、リーマンショックを期に一気に仕事がなくなってしまって……苦笑 でも、生活はしていかなきゃいけないので、アルバイトを始めたんです。

それで、当時雇ってくれたのが老人ホームだったんですよね。1年間アルバイトとして働いて、そのまま正社員になりました。そこで初めて、年配の方のお相手をしたんですよね。結局、そこでは介護職を3年、相談員として2年働いたのですが、その時に、「もしかするとご年配相手の仕事ならできるのかも」と思うようになりました。

それから、「ご年配を相手にする仕事」「現金で取引できる」という条件で、独立できる仕事を探し始めました。それで見つけたのが金沢屋。それができるなら、何でも良かったんです。

介護職などでの独立は考えなかったのですか?

たしかに、最近はヘルパーや入浴サービスのフランチャイズもありますよね。でもまったく考えませんでした。

介護職の仕事って、現場もそうですし相談員のときもそうなんですけど、利用者さんのお世話や、ご家族様の悩み事をお聞きしていたので、いろんな辛い面を見てきたんですよ。責任の大きい仕事ですから、その重圧に押しつぶされそうになっていました。これは、一人で長続きできる仕事ではないなと。

あと、亀岡にはご年配の方がたくさん住んでいらっしゃることは知っていたので、ここで働きたいなと。あとは、あんまり深く考えてはいませんでした。ご年配の方とお話しするのは楽しいなと思っていたので、それは活かしたいなと。

この仕事にして良かったと思いますよ。自分で言うのもどうかと思いますが、亀岡の方から良い印象を持ってもらっていると感じます。息子と一緒に、お宅に伺うこともあるのですが、「今日は、ぼくちゃんは?」って、息子のファンもいらっしゃいますし(笑) それはやっぱり、老人ホームでなんとなくコミュニケーションの仕方を身に着けたからかな。

説明を受けてから、開業するまでの流れを教えてください。

2014年の5月か6月頃に、説明会に行きました。前職の会社を辞めるまでに時間がかかってしまって、開業までには1年半近く経ってたかな。開業資金の資金繰りが上手くいっていなかったこともあります。それでズルズルと。だから逆に、契約金を支払って、研修を受けてからオープンまでは2~3週間と早かったです。

説明会の印象はいかがでしたか?

元々フランチャイズが嫌いだったので、とにかく怪しいとしか思っていませんでした(笑) だから、本部がどんなに「反響率が〇%で、売上が〇〇円ぐらいになる。経費が〇〇円なので、利益がこのぐらいです」と説明してきても、「こんな話は全部ウソだ」と思ってたんです(笑) だって、この地域でそんなに反響があるなんて思えませんでしたし。

でも、本部の方から説明を受けて、最後に「亀岡は面白いかもしれませんね」と言われて。なんだか、その一言がすごく心に残ったので決めました。それが無かったら、始めなかったかもしれませんね。本当かどうかわからないにしても、亀岡という地域をある程度分かっていた上で、そんな発言をしてくれたんだと思ったんですよ。簡単なことって誰にでも言えますから。一般的なことしか言わないような人だったら、信用しなかったと思います。

本当は、自分自身で商売をやりたかったんですけど、それは難しかったですね。ソフト開発だと下請けになりますし……。金沢屋の場合は、フランチャイズだけど、お客様と直接やり取りする元請けスタイルだったので、元請けができるならフランチャイズでも仕方ないかと思いました。当時は一か八かという気持ちでしたね。

怪しいと思いながらも始めたということでしたが、開業された当初はいかがでしたか?

亀岡は反響が良くて、とにかく驚きました。全く信用していなかったのに、チラシを撒いた月に40~50件くらいの反響があったのかな。

ウチは6月15日にオープンしたんですけど、その当日に近所の温泉施設の支配人から「たまたまチラシを見たんだけど、網戸を張り替えてくれる?」って電話がかかってきて。「え?うちでいいんですか?」って感じでした(笑) それから一年くらい、継続的にお仕事をさせてもらいました。

もともと、地元の方とは付き合いがあったので、「開業祝い」みたいな形で、すぐにお仕事を頂けたりしたので、すごくラッキーだとは思ってます。

その温泉施設さんの仕事では、幅広の障子の張り方も学びましたし、数が多いのでどんどんこなしていけますよね。一日で納品する方法とかも編み出しましたし(笑) ご祝儀案件も含めていろんなことが経験できたので、実績にもなったし、自信もつきました。

ご家族のサポートはありますか?

最初は私一人でやっていたんですが、今は息子と二人でやっています
以前だと、私が引き取り・張り替え・納品まで全てやっていましたが、今では張り替えの作業は息子が全てやっています。

息子と一緒に引き取りや納品に行ったりすることもありますが、一緒じゃないと「あれ?今日息子さんは?」なんて言われたりするので嬉しいですね。

印象的なお客様はいらっしゃいましたか?

たくさんいらっしゃるので、どうかな。特徴的なのは、お寺さんや神社の張り替えでしょうか。地元でのつながりもあって、依頼してもらえています。あとは、自治会の集会所の網戸や障子なんかもありますね。

ウチが張り替えをさせて頂いたお寺さんは、檀家さんがボランティアされていたらしくって。でも、それまでずっと修理してくれていた工務店さんが「もう私たちもしんどいから」「年寄りばっかりだから頼むよ」って電話をかけてきてくださったので、仕事をお受けしたらすごく喜んでくれました(笑)

そういう、お寺さんの本堂とか、大きな施設だと、障子が3メートルぐらいある巨大な障子もあり、作業の勝手も一般的なご家庭とは違いますよね。普通は、引き取ってきてこちらで張り替えの作業をしますが、大きすぎて引き取ることが出来ず、本堂の裏で作業をさせてもらった事もあります。

亀岡店は、リピーターさんが多いように印象を受けますが、
なにか意識していることがあるのでしょうか?

そうですね、この感じになったのは2~3年経ってからかな。特にリピート頂けるようになったのは3年目からです。

最初の頃は、「紹介してください!」ってお願いしてたんですけど、なかなか上手くいかないんですよ。それでやり方を変えて、値段に関わらず、一件一件丁寧に仕事をするように集中することにしたんです。例えば。1500円の仕事を1400円に値切られたとしても、ウチが受けたのならちゃんと仕事をしよう、と。お客さんに喜んでもらうことを、第一優先にしたんです。

気付いたら、たくさん紹介してもらえるようになりました。今では、工務店さん、畳屋さん、クロス屋さん、引っ越し屋さん等々からも紹介がありますし、全然知らない工務店さんからも「コレやって」って連絡ありますし。

去年の年末も、個人で経営されている建具屋さんが「年末までに張り替えをしてほしい!」とお問い合わせがあり、「頑張ります」って答えたら、30枚ぐらい持って来てくださって。それを2~3日という短めの納期でやってくれと。途中から「まだかまだか」と催促があるんですけど、「できました」と納品したら、更に追加で持ってきて下さって、驚きましたね(笑) 年末にやるなぁと。更に、年明けにも持ってきてくださいましたし。

それだけ、周りに仕事がたくさんあって、仕事が回ってないからウチに来てるんだと思います。これも、さっきの話と同様で、一件一件ちゃんと丁寧に仕事をしたら、多分次につながるんだと思います。

開業当初からチラシの反響はすごかった、ということですが、それは今も継続していますか?

すごかったですよ。疑ってたから、余計にびっくりしました。ウチは月に40~50件反応があるんですけど、それが6月の開業当時から、ずっと毎月減らないんです。なので、すごく忙しかった。

始めた当初は、今よりも慣れていないので作業も手間取りますし、お宅によって襖のサイズが幅広だったり、丈長だったりバラバラなものが来るんですよ。もう、一日中張り替えてましたね。何度も何度も張り直して、ようやく持っていくのが限界。

仕事量は多く、当時は商品説明が上手にできなくて、品質が低くて単価が安いものばかり請け負うことが多かったんですよね。忙しくし過ぎて、商品の勉強もきちんとできなかったし。お客様から言われた通りの素材で張り替えるので手一杯。

3年目頃から単価を上げたいと思い、襖メインで、おすすめ4500円~のチラシに変えました。反響は少し下がりましたが、この頃からリピート、紹介や来店も多くなり、件数は変わらず、単価も少し上がりました。

反響が落ちるのは1月、2月くらいです。

この亀岡エリアでの地域性は感じますか?

これこれ、開業時のチラシはこれにしたんです。「写真を見て」とか、ここに書かれてある文言が気に入ったと言われることが多かったです。ウチは定期的にチラシの文言を細かく変えていました。お客様が毎回読まれており、びっくりしました。私も気に入っていて、1~2年ぐらいはこれにしてました。

あと、地理的なことをいうと、城下町と新興住宅地の違いはあるかもしれませんね。私は地元の人間ではないので、付き合いがほとんどないところからスタートしています。だから始めはすごく不安でしたよ。でも、チラシを撒いてみると、新興住宅地のお客様から問い合わせをたくさんいただき驚きました。

昔から住まれている方に信頼してもらおうと思ったら、やっぱりお店を構えて長く続けることだ思って、現在の場所に店舗を構えました。はじめは自宅で作業していたんですけどね。加盟する時、「無店舗から始められる」というのをウリにしていたから、そうしたんですけど、店舗を構えると来店して頂けるし、「店の前通ったで、がんばってたなぁ!」と話のネタにもなっています。

自宅で作業してた時は、住所が遠いからという理由で、何回か断られていましたから、店舗を構えて良かったです。もちろん、家賃を稼ぐのは大変ですけどね。

移転先の目の前の道路って、地元の方が多く通る場所なんです。だから店先で張り替え作業をしていると、地元の方が車内から見ているようで、通りがけに声をかけてくださるんですよ。ある日、突然襖を持ち込んできて「これいくら?」って言われることもありました。「取りに行きますよ!」と言っても、「いや大丈夫、そっちに行くよ」という感じで、すぐにお越しになられて、軽トラにバーン!と襖を積んでこられることも、よくあります(笑)

技術的な面で注意・工夫されていることを教えてください。

この地域は、すごく湿気が強いんです。なので、単純に張り替えるだけだと、すぐに襖の紙がたるんでしまいます……それは本当に苦戦しました。お客様からしたら、襖紙はパリッとして欲しいじゃないですか。お金は頂けるんですけど、どうしても、たるんでしまうのが本当に心苦しくて、たくさん研究しました。

当時、他のオーナーさんを必死で探して、良いやり方はないかと聞いて回っていました。そこであるオーナーさんから湿気を吸収させてキレイに貼れるやり方を教えて頂いたんですよね。それを取り入れてから、上手くいくようになりました。やっぱり、地域によって気候が違うので、少しずつ工夫した方がいいんでしょうね。

あとは、近所の建具屋さんや表具屋さんとも仲良くなれたので、そこから教えてもらったことを各店舗のオーナーさんと共有したり。関西周辺のオーナーさんともやり取りをして、お互いに技術を高め合えたらいいなと思っています。

今は、オーナー同士で集まって、オーナー会のようなことも定期的にしていますしね。技術面も営業面も、勉強会を通して学びたいなと。関西全体のレベルが上がれば、結果的にお客様にとっても有益だと思いますしね。

金沢屋をつづける上で、大切だと思うことを教えてください。

技術的な面はもちろんですが、私の場合は、自分をさらけ出すということと、心配りですね。「心配り」というのは、仙台で活躍されているオーナーさんの受け売りなんですけど。あとはお客さんに「ありがとう」と言ってもらうために、一生懸命頑張る。

「営業」を強く意識してしまうと、高い商品をお勧めしたくなっちゃう。それこそ高い紙をお勧めすれば良いわけなんですが、私はお客様の家に合った、本当に良いものを提案する様心掛けています。お客様の好みをお聞きして、ご自宅の雰囲気に合わせて、空間をイメージしたうえで提案しているんですよね。結果的には、その方が喜んでいただけていると思います。

4年間通して、金沢屋でやりがいを感じたことはありますか?

襖や障子が綺麗になったときですね。お客様のお宅に納品して、はめ込んだとき、「自分の家もこうしたいな」と思うくらい上手くできたら嬉しいですし。それを「良かったわ」って喜んでもらえて、次もまた注文してくださったり、お知り合いを紹介して頂いたりしたときも嬉しいですよ。最初なんか特に。

自分のやった仕事が喜んでもらえた、納得してもらえた、ということが実感できるときは、いつも感動します。

今の時点での課題を教えてください。

毎日の仕事がバタバタし過ぎて、お客様の管理ができていないことでしょうか。他のオーナーさんはお礼状を出していますけど、私は一切できてなくて。2年前までお客様の名簿を作っていたんですけど、それも作りかけのまま。今は、知り合いに頼んで、その名簿を完成させようとしているんですが、それでも追いついていなくて。ちゃんと管理をして、ダイレクトメールを送ったりしたいんですけどね。

そんな状況でもリピートしてくれる方は居るので、やっていけていますが……でも、本当は「仕事において顧客管理はものすごく大事」だと思っているので、年内にはできる様に進めます。

余暇はどのように過ごしていますか?

この仕事がきっかけで、地元の不動産屋さんとお付き合いができたんですけど、その方のお誘いで、バイクの免許を取得して、ツーリングに誘って頂くことがあります。とはいっても、毎日お昼ご飯も食べないで働くほど忙しくしているので、無理に予定を空けないと休めないんですよ(笑) だから、誘ってくれてありがたいなと思っています。

今後の目標を教えてください。

将来的には、今一緒に仕事をしてくれている息子に、この事業を引き継いでいきたいと思っているんですけど、まずはそれまでに、亀岡で基盤を作っていきたい。道を開拓するまでは私がやって、会社になったころには息子に渡して、その後は作り上げていって欲しいなと。だから、今は息子といろんなことを喋るようにしていますよ。

今は張り替えがメインですけど、リフォームもゆくゆく取り入れていきたいですし、私は建築やリフォーム関係の事をあんまり知らないので、それを息子やリフォーム屋に勤めている娘に聞いたり。畳やクロスはやったことがありますけどね。

いずれは、この亀岡地区で、張り替えもリフォームも、家のことなら「金沢屋」と言ってもらえるように、いろいろと取り組んでいこうと。でも、基本的には張り替え屋だってことは無くしたらダメだと思っています。

長時間お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

店舗詳細

金沢屋 亀岡店
京都府亀岡市吉川町穴川的場

PageTop