襖・障子・網戸の張替専門の店舗運営を行う現役金沢屋オーナーに金沢屋を選んだ理由をインタビュー

金沢屋 髙田・香芝・王寺店

奈良県北葛城郡王寺町太子
2017年4月開業

インタビュー時期:2019年5月

前職は何をされていたのですか。

18歳から10年間、酒屋で丁稚奉公をさせていただいて、29歳で酒屋として独立しました。それから6年間は酒屋をやっていたんですけど、35歳でコンビニに転換することにしました。それは、時代の流れを感じたからですね。

そのコンビニは拡大路線で進めていて、一時は売上西日本1位になったのかな。年商でいうと14~15億円ぐらい。従業員がみんなついてきてくれたのでね。今でも、その流れで9店舗運営しています。

既にコンビニで成功されていながら、金沢屋を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

そのコンビニチェーンが他のコンビニチェーンに買収されちゃって、収益システムが変わっちゃったから(笑) 拡大すればするほど儲かる仕組みじゃなくなって、今までのやり方では通用しなくなってしまった。

それに、若いころから「うまくいっているうちに、次の仕事を探さないといけない」という考え方なので、コンビニを経営しながらも、常に何か探していたんですよね。その時、ちょうど雑誌で金沢屋を見て「これは、すき間産業かも」と思ったのがきっかけです。

金沢屋でやっていこうと思った決め手はなんでしたか?

皆さん、「もう和室なんていらない」「襖なんてない」と言いながらも、家を建てるとなると案外、若い人でも「和室が欲しいな」と言うかと思って。数は少なくなっても、必ず残る仕事だろうなと思ったんですよ。特に、奈良県ではまだまだ瓦の家がたくさんありますから。

あと、僕は割と器用というか、中学のとき図工と体育だけはいつも10点満点の10か9で、もともと手や身体を動かすのが好きなんですよね。金沢屋の仕事を見たとき「これはすぐ出来るな」と直感しましたし、自分の好きなことをやりたかったんですよ。

コンビニ経営は充分やりましたし、もう人生第2のステージに入っているので、好きなことをしていこう!と思いました。従業員にも、「好きなことをさせて!」と頼んだぐらいです(笑)

コンビニと比べて金沢屋はいかがですか?

フランチャイズビジネスの中でも、最も過酷だといわれるコンビニ経営をやってこられたので、金沢屋を始めるのは何も怖くなかったですね。

僕たちは金沢屋の看板を使って真面目に取り組んでいます。金沢屋は、本当に非の打ち所がなにもない。それで文句言う人は逆におかしいなっていうくらいで。ロイヤリティも1エリア5万と定額かつ安いですから、ウチは初めから2エリア契約しました。フランチャイズ契約特有の、制限や縛りが厳しくないところも決め手です。

開業当初は、いかがでしたか?

ウチは2017年の4月に開業したので、今3年目に入ったところですが、出だしのスタートはすこぶる悪かったですよ(苦笑) 悪いというより、何をしていいかわからないので、こちら側が本気を出してなかったと言いますか……

コンビニの仕事もやりながらなので、そちらに行けばいくらでも手伝うことはあります。それで金沢屋に集中できなかったんだと思うんですよね。金沢屋で「何をどうしよう」という具体的な目標が無くて、「まあ赤字さえ出なかったらいいよな」程度の意識でしたから。張り替えだけで、月の売上がどのぐらいになるのか?なんて、予想がつかなかったですし。

場所だって、当初は酒屋時代に使っていた自宅倉庫で作業してました。でも、だんだん仕事が増えてくると、自宅倉庫のままだと意外と狭いことに気が付いて……。持ち上げたタイミングで障子が破けたりしたので、別に場所を借りることにしたんです。

場所を借りたら、その分回収しなくちゃいけないですよね? そのころから僕自身も火がついてきて……「じゃあちょっと本気出していくわ」と。

真剣に取り組もうと意識してから、どのような変化があったのでしょうか。

本部が推奨している折込チラシ以外にも、自分でチラシを撒くようにしました。ポスティングも、手渡しもしましたね。デザインも、ウチならではの特色が見えるように工夫したり。

もともとこの地域で酒屋とコンビニをやっているので、それなりに顔も知られていますから、そこからは割とスムーズに知れ渡ってくれました。地元の皆さんは「え?そんな事するの?全然違う仕事じゃん!」「なんでコンビニから襖なの?」って言ってくれましたが、それが話題の切り口になったりします。 僕は僕で、「いや、本当は元々好きだったんですよ。やってみたかった仕事なので、従業員に“最後は好きな仕事をさせて!”ってお願いしたんですよ……」なんて話したりして(笑)

僕はこういうタイプの性格なんで、いつも名刺代わりにチラシを持って歩いて、見かけた人には「奥さん久しぶり!」とか言って、渡して歩いてるんです(笑)

実際に、自分でチラシを撒いてみて、お客様の反応はどうでしたか?

皆さん驚いてますね。最近は新聞を取っていない家庭もあるので、「そのチラシ見たことないな」って言われることも多くて。「それじゃ見てみて」と渡して、「襖、障子ってこれなに?」「僕が張り替えてるんだよ」「それじゃ今度言うよ!」っていう感じ。

でも、ウチのチラシを何枚も取っておいてくれる人もいて、「やろうと思っているから捨てないでおいて、それでまた入ってきたからまた取っておいたの……」って見せてくれるんですよね。だから絶対チラシ撒きはしなきゃいけないと思います。種まきですね。必ず芽は出ます。

開業時に反応が悪かったのに、それでもチラシを撒き付けるのは、リスクが高いと感じませんでしたか?

最初の方で反応が悪いと、気が滅入りますよね。当たるか当たらないかもわからないですし。新聞折り込みだと、毎月蓄えていたお金が減ったりします。それは怖いと思いますよ。

でもそう思うんだったら、近所からでいいから、まずは自分の足で配ってみたらどうかな。そしたら体を動かした安心感もあるし、ちょっと心に余裕が出て来ると思います。

ポスティングに行くと、たまに「勝手に何してるんだ!」と怒る人もいますけど、そこで私はすかさず「私、こういう、襖や障子の張り替えをやっているんですよ。ご主人良かったら見て下さい」と声をかけるようにしています。そうすると、自分の家のことだから、一度はチラシを見てくれますよ。

僕は悪いことをしているんじゃなくて、「良いことを教えている」という気持ちでやっているんです。「僕こんな事出来るんですよ~」という気持ちで撒いていったら、撒き方ひとつとっても全然違うと思いますね。

他店のオーナーさんが言ってましたけど、「自分に自信、商品に自信、会社に自信、3つの自信を持っていたら良い」。あれは本当にそうだと思います。まずは、仕事に自信を持ってなきゃ。

それからは、順調に仕事が増えましたか?

そうですね、大口の注文をもらったりしましたよ。僕は、自分がやる事をわかっていないと仕事を取るのが嫌で、職人さんや建築士さんから勉強させてもらって、僕自身の中に落とし込んでから仕事したいと思っているんですね。

なので、勉強がてら色々な業者さんと関わっていたら、1年目の冬……開業して8カ月目くらいに、材木屋さんから「団地の襖、合計400枚」という大口の注文が入ったんです。それも短い納期で。ありがたいですよね。

でも量が多かったんで、どうしようかと思いましたけど、1年目の冬は比較的注文が減ってしまうと噂で聞いていたので、とりあえず頑張ろうと。毎日夜11時ぐらいまで2人がかりで張り替えて……大変でしたよ(笑) 最後の方は、2人とも無言で作業してました(笑) 無理だったら他のオーナーさんに助けを求めるつもりでしたけど、なんとか自分たちで納品できました。

その案件は、張り替えだけじゃなくて、木枠部分が壊れている襖も結構あったので、その修理もして。そういう襖も含めて400枚対応したわけですから、かなり勉強になりましたし、技術力も上がりました。

3年目になってからは、口コミやリピーターが増えてきたんじゃないかな。この仕事は、1~3月には仕事が減ってしまう傾向にありますけど、ウチはその時期でも大きく売上が落ちることはありませんでした。

団地の襖を400枚修理するというのは、具体的にどんな作業だったのでしょうか。

従業員の関さんに手伝ってもらって、2名体制で作業しました。彼は、大学在学中からアルバイトとしてコンビニで働いてくれていて、大学卒業後すぐにウチで働きたいと言ってくれましたけど、外の世界も見てきたら?ということで、一度は別の会社に就職して、また戻ってきてくれました。

金沢屋の事業を始めようと思ったとき、関さんに「手伝ってくれない?」って相談したら、快く「良いですよ!」ということだったので、立ち上げからずっと一緒です。彼がいてくれたおかげで、1年目から400枚の発注に応えられたんです。

仕事自体は、大阪府の公団住宅の襖400枚を、4週間で納品するというもの。でも、各部屋ごとに状態が違っていて、中にはボロボロに崩れているものも……。

張り直すだけじゃなくて、枠を修理したり、はめ込んだときにガタついていれば、カンナで削って滑りを良くしたり。襖自体ははどの部屋も同じものなんですが、部屋ごとの環境の違いによって壊れ方が違うので、修繕箇所が変わってきます。ひとつひとつ修理していくたびに、襖の構造を深く知ることができて良かったですよ。

初めての事だらけだったので「どうする?どうする??」って、二人で一生懸命考えながら、やりきりました。400枚で納期付きなんで、スピードも身に付きましたし。

納品後、公団住宅では品質検査があるんですよね。他の業者さんは、その検査で指摘を受けて、修理をやり直すこともあるようでしたが、僕たちのやった仕事は、ひとつも指摘を受けませんでした。それも嬉しかったです。

技術的な面や、工夫されている点を教えてください。

営業はさっき言った通り、普段からチラシを持って歩いて、いつでも配れるようにすること。現場では、一回一回の取り組みに気を付けるようにしています。もともと、掃除は絶対綺麗にしたいタイプなんですけど、網戸なんかは特に、元より良い状態で返すことを心がけていますね。「新品みたい」って言われることを目指してます。

ここは田舎なので、網戸に蜘蛛の巣やカマキリの巣が付いていることがありますから、それを高圧洗浄機で洗うこともしますよ。障子も一枚ずつ桟を綺麗に拭かせてもらうし、糊も出来るだけ綺麗に落とせるように、ブラシと亀の子たわしを使って洗います。あとは、張り替えるだけじゃなくて、動きがスムーズになるように修理して、使いやすくすること。

そうすると、「そこまでやってくれているから、他の事もあなたに言ったらきっちりやってくれるだろう」という信用につながりますよね? それが大事なんですよ。

一軒一軒、時間をかけるのは非効率に見えますけど、信用してもらえるとお客様と密な関係なれます。そうなれたら、納品した後に「ご近所とかお友達がいたら紹介してくださいね」って言って帰る(笑) それが紹介に繋がるんだと思うんですよね。

年月を重ねるにつれて経営が安定しているようですが。

2~3年目に入って、リピートしてくれるお客様が増えたからですね。それも信頼の積み上げを意識していたから、そうなれたんだと思っています。お客様から信頼してもらうためにいくつか意識していることがあるんですけど……できるだけ納期を早くすることと、時間を守ること、あとは気遣いです。

気遣いっていうのは、お邪魔したお宅で自前のスリッパをちゃんと履くとか、そういうこと。他のオーナーさんだと、必ず白い靴下を履くって言ってる方もいましたね。お客様に「気を遣ってるんだな、この人」と思ってもらえるような行動をするということ。お宅に仏さんがいたら「ちょっとだけ挨拶させてもらいます」とかね。

あるオーナーさんの言葉を借りると「心配り」です。今は、世の中全体がそういう事を徹底してきてるんじゃないかな。僕の知ってる外部の大工さんも植木屋さんも、元来たよりも現場を綺麗にして帰られますから。彼らがそうだったら、僕らももっとしなきゃいけないなと思っています。

あとは、一度お仕事をさせてもらったお客様からの「こんなのは出来る?」というお問い合わせには、積極的に応えるようにしています。張り替えじゃなくてもですよ。ドアノブの交換とか、駐車場の塗り替えとか。ちょっとした補修や、リフォーム関係も含めて、お客様のニーズに合わせて、付き合いを広げるようにしています。

コンビニと金沢屋を兼業されていますが、普段どんなスケジュールで働いているのですか?

朝6時に起きてコンビニに行って、10時までの発注業務だけやって、コンビニの従業員とコミュニケーションを取ったら、すぐに金沢屋の仕事に行きます。それからは、ずっと金沢屋の仕事をして終わり次第、もう一度コンビニに戻ります。だいたい5~7時ごろですかね。そこで高校生のアルバイトとまたコミュニケーションを取って、「じゃあ頑張って。頼むよ!」と言って帰ってきます。だいたい、最低12時間ぐらいは働きます。

金沢屋の仕事はポスティングもしますから、体力が必要ですよね。今そんな働き方ができるのも、若い頃に酒屋で培ったものじゃないかなと思っています。

当時の働き方は、結構ハードにしてましたよ。酒屋で丁稚を始めたころ、電話番だけを任されていたんですけど、僕自身はそれじゃあ足りなくて。もっとできることが無いかと思うようになったんです。それで相談したら、「御用聞きをしたら?」とアドバイスをもらったので、地域の御用聞きをするようになりました。

会社が担当しているエリアを6つに分けて、月~土まで1日1区間ずつ割り振って、地域の家庭を回るようにしたんです。

で、やってみたらその町でそんなことを始めたのは私が初めてだったんですよ。突然お宅に訪問して、奥様方に「今度からこの辺のエリアは月曜日に御用聞きに回ってくるので、この日は、お醤油でもなんでも、一袋からなんでも持ってきます!」と声をかけて回りました。そうすると、主婦の方は一升瓶なんかの重いものは大変だったんでしょうね、注文が増えたので、その店は輪をかけて忙しくなったんですけど、僕自身もすごく忙しくなって。

毎日、朝から100件以上のお宅を回って、昼から午後には配達して……そんな丁稚時代の経験と習慣が身に染み付いているので、今の金沢屋の仕事でも同じように取り組んでいるわけなんです。そういう時代があったからこそ、なんでしょうね。

2~3年目から、リピーターさんが増えているということですが。

そうですね。やっぱり丁寧に仕事を積み重ねていた結果として、リピーターさんが増えているのではないでしょうか。

地元での金沢屋の認知度はいかがでしょうか?

多少は知られてきたかもしれませんね。よく言われるのは、他の業者と比べると安いねって。それで業者さんからの認知度も上がっているように思いますね。

近所のリフォーム会社から「襖できるよな?」と聞かれて「出来ますよ!」と突然仕事を頂くこともあります。専門の表具師さんとかに頼んだら、金沢屋の金額と比較にならないくらい高くなってしまうらしくて。

なので、一般のご家庭以外の、業者さんからの依頼も随分増えてきました。

今後の目標を教えてください。

売上も増えていますし、リピーターさんも増えていますが、これで落ち着かずにもう一段階上に行きたいなと考えています。

襖・障子・リフォームにとらわれず、ニーズのあるものをどんどん取り入れてやっていきたい。「張り替え以外にもこんなことできないかな?」というお客さんの声もあったりしますしね。それに応えられるような状態にしたいですね。

あとは、コンビニ業界では西日本一を取ったんで、金沢屋の中でベスト10に入って、ゆくゆくは1位を狙いたい。

会社全体としては、特定の商売にこだわらず、出来ることを若い人にどんどんチャレンジして欲しいと思っています。初めて起業する人だと、なかなかお金を借りることも大変だけど、僕は長くやってきているから、経営面からアシストすることもできるかなって。

あと、会社のみんなで慰安旅行に行きたいですね。土日も関係なくズバッと休んでハワイとか(笑) アルバイトの人たちが成長したら、それもできるようになりますんで。店長たちも、2週間に1回は休めるような会社にするのも夢かな。休みあっての仕事だと思いますからね。

長時間お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

店舗詳細

金沢屋 髙田・香芝・王寺店
奈良県北葛城郡王寺町太子

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