神奈川県横浜市栄区飯島町
2018年8月 開業
インタビュー時期:2019年3月
リストラになっちゃったんです(笑)単純に。去年(2018年)の6月末ですね。一応、前の会社から、再就職斡旋会社を手配してもらっていて、そこと契約していたんですよ。でも、新しい仕事を探している最中に、たまたまテレビで金沢屋を観たんです。神奈川県のオーナーさんが映っている番組でした。それで興味を持って、資料を取り寄せたらトントンと独立が決まっちゃいました。
独立するのも迷ってはいたのですが、退職時に早期退職金としてまとまった金額が手元にあったことと、再就職の斡旋会社が2年間の契約になっていて、もしダメになっても2年以内であればもう一度やり直しがきくという好条件がそろっていたので、チャレンジしてみてもいいかなという気になりました。「ダメだったらまた次の仕事を探せばいいや」と……。そういう意味では恵まれています。
そうですよね。だから失業保険ももらっていません。もったいないなとは思いますが(笑)。カミさんも賛成してくれなくて……。でも、今考えると、失業保険をもらってのんびりしているうちに1~2ヶ月経ったら、たぶん働くのが嫌になっちゃうだろうから、すぐに動いて良かったのかな、と。
OA機器メーカーの営業です。現在の仕事とはまったく畑が違うんですが、実は、以前親父が仕事を退職したあと、シルバー人材センターで同じような仕事をしていたんです。親父に教えてもらって、自分の家の障子は自分で貼り替えていたので、多少は馴染みのある作業でした。「障子以外に網戸とふすまのあと2つ覚えれば何とかなるだろうな」という、わりと軽い気持ちでこの仕事に興味を持ちました。
オープン日の8月7日に、このあたりの地域に新聞の折り込みチラシを3万枚ほど撒きました。すると、その日のうちに15件くらい電話が来まして……。
本部からは「月に3万枚はチラシを入れましょう」という助言もあったので、その通りにしていました。3万枚配って、約0.1%の反響だとすると30件の反応があります。それで、1件あたり平均3万の売り上げがあれば、月に100万円前後くらいまで売り上げを立てることができますよね。だとすると生活には困りません。3万枚チラシを配り、反響が来た分の仕事が片付いてきたら、またチラシを入れる……という繰り返しで進めています。
なくはないです。最初15件来て次の日が7~8件の、その次の日に7~8件といったイメージです。ほとんどの週に2~3件は反響がありますから、月でいうと30件くらいです。2ヶ月目以降からは、チラシ配布当初に5~10件の連絡が来て、それからボチボチ忘れたころに2件ずつ来るという月がずっと続いています
ですので、反響が落ちると言っても、お客様からのお問い合わせの時期がずれると言う感じなので、トータル的には平均的な反響に落ち着く感じですかね。
今はやっていません。でも最近、区役所にあるモニターへの広告出稿を打診されていまして、それはそんなに金額が高くないので検討しています。あとは郵便局とか……。この仕事は80歳以上、若くて70代とご年配の方が対象になることが多いので、集客はネットよりも、折り込みチラシをベースに考えてはいます。チラシの反響率を上げるためにどうしようかということを、まずは検討しているところです。
集客の方法は、原則として自分で考えます。まだ始めて半年なので、あれこれ手を伸ばしても良くないというのもあり、様子見の最中。年末に掛けてお客様のお問い合わせが集中したこともあり、年始は緩やかな状況なので、そろそろ新しいお客様を呼び込めるよう考えなきゃいけないのですが……(笑)。
そうですね。だから「今はこんなもんかな?」とは気楽に考えています。8月に開業して今まで休みがなかったので、ここで少し休ませてもらおうかな、と。カミさんにも「2月は暇らしいよ」とは言ってあるので、そこに関する突っ込みはありません。
年末が忙しいのは、たぶんお客様も、家が汚いまま年明けを迎えたくないから。駆け込み的に11月12月に仕事が入ってくるんじゃないかな?
なので、本当に年末は忙しくて。来年に回せるものは「ごめんなさい、来年にしてください」とお願いしながら、お客様にご迷惑が掛からないようスケジュールを調整して取り組んでいました。一度、「お正月に子どもや孫たちが来るから、ここの部屋と居間を修理してほしい」というケースあったのですが、そのうちひとつが納戸だったので、「納戸は年明けにしてくれないか」とお願いしたら、来客の際に人目に付くスペースではなかったので「いいよ」と快諾してくださり、納戸は年明けにしてもらいました。ですので、1月までは12月の名残もあり、少し忙しいです。
夏に開業したばかりのときはかなりの依頼がありました。やっぱり季節性があるみたいですね。冬の時期は窓を開けませんから、皆さん破れても気にしないじゃないですか。だから、まだ寒い今のうちに、ふすまや障子を貼り替えたお客さまには「3月4月頃までに網戸もやりましょうよ」という話はさせてもらいます。
物によりますね。ナイロン製だと、すぐダメになっちゃいます。日当たりが強い場所にあるものなどは、劣化してすぐに切れてしまうケースが見受けられます。
網戸って、古くなると脆くなって触っただけでもパリっと破れちゃうんですよ。とにかく日差しに弱いので、日当たりのいい部屋かどうかによって違ってきます。たとえば、トイレやお風呂など、北側にあるお部屋の網戸は案外大丈夫だったりします。
はい。最初の3ヶ月はあんまり休んでないかな。研修で丁寧に教わっているのと自分自身でもかなり練習をしたので、張替えの技術に関しては問題ありませんが、実際のお客様とのやり取り・引取り・納品などの作業には慣れていないため、施工もお客様それぞれで勝手は異なるので多少時間的なロスが発生しますしね。最初は勝手もわからず、依頼が来たお客さまのスケジュールを全部ギチギチに入れていったら、結局休みが少なくなってしまい……。最近は平日のうち丸一日を施工日に当てることにして、開業4ヶ月目ごろからボチボチ休めるようになりました。
うちは障子が多いです。戸建て住宅では、縁側との仕切りに障子が使われていることが多く、けっこう障子の依頼があるんですよ。
それにふすまも多いです。昔の公団住宅の団地では仕切りに襖が使われているので、枚数がたくさん出ます。
今お越しいただいているこの場所の、となりの作業場で貼り替えています。自宅は別の場所なのですが、自宅のある地域は他の加盟店オーナーがすでに開業していたんですよ。「どうしようかな~」と悩んでいたら、この地域が空いていることが分かって……。私はすぐそばの高校を出たので、ゆかりのある場所ですし、地の利もあるので、自宅からは少し離れていますが、ここに作業場を借りました。
かなりの頻度で枠が折れている場合がありますので、それはきれいに直しています。補修した後、釘で打って補強します。紙を貼るときにシワができないように気を付けています。霧吹きをすればシワは取れるんですけど、霧を吹く前にできるだけシワ伸ばしてあげたほうがいい。あとは剥がれないように気を遣うことかな?
小さいのも合わせて、障子20枚弱くらい? 持ち運びは相当大変でした。サイズが大きかったりすると、納品時は2回に分けて運ぶことになります。
わからないことがあればSV(スーパーバイザー)の方に電話して教えてもらいます。あとは加盟店オーナー同士のLINEのグループがあるので、そこで質問すると、皆さん親切で、すぐたくさんの返答が返ってきます。とくに研修を一緒に受けた同期のグループとはLINEで頻繁にやり取りをしています。
開業時の同期は5人。神奈川県内が一人、東京の端っこの方が一人、名古屋が二人、九州が一人。九州の方も横浜で研修を受けていました。
枚数が多くて、納期に間に合わなかったことがあります。 とくに最初のころは、お客様対応から納品までの一連の流れがなれておらず、思ったように作業できずに苦労しました。嬉しいのは、過去のお客さまに新しいお客さまをご紹介いただくことです。なんとなく認められたような気分になれますから。
あと、ボロボロの障子やふすまをきれいにして、完成した品を納めるとお客さまが喜んでくださる、それも嬉しい。
この前納めたのは猫を3匹飼ってらっしゃった方で、猫が引っ掻いちゃっていたものでした。当初、お客さまは「新調するよ」とおっしゃっていましたが、新調すると1万円以上かかってしまうので、勿体無いから2千円で枠からきれいに直しました。ただ、けっこう時間がかかったので、もう少し料金をもらえば良かったかなと……(笑)。とは言え、喜んで頂けたので何よりでした。
完全に崩れ落ちてしまっているものがありました。 枠が2、3本折れちゃったりして……。あと、枠が腐っていて、虫も出てくるような状態でした。これはさすがに新調してもらいましたけど。
内部を撮影しておくことはよくあります。修理すると紙を貼るので、中の木枠は見えないじゃないですか。なので「これをこういう風にしましたよ」というのをお見せするのが目的です。
まれにありますよ。明らかに安い値段を提示している会社とバッティングするケースも……。ですが、それはそれで「そちらの会社でお願いします」と割り切っています。
単に値段が高い安いではなく、品質やデザインなどの違いなので、お客様の希望に沿える形で3000~5000円くらいの質の紙を提案させて頂いていることが多いかもしれません。
とあるオーナーさんは、1500円を提示されている同業者がいた場合、お客さまに対して材質の説明をなさると言っていました。「1500円と3000円の材質ではこういう風に違っていて、持ちもこれくらい違いますよ。だから3000円の材質のほうが結果的にはお得ですよ」と、実物を見せながら説明するとのことでした。
競合の料金を引き合いに出されて「もっと安くならない?」と言われたら、「もっと良い素材があって、こういう紙で貼り替えますよ。どうでしょうか?」というお話をしています。
やっぱり、お客さまが喜んでくださる顔を直に見られること……かな? 前職は法人営業なので、直接お客さまに向き合えるわけではありませんでした。半年程度で改善提案を出すのですが、それがそのままその通りになって「効果出たね」ということはありますけれど……それだと、今のように納めたその場で喜んでもらえることってあまりないわけです。
今では、納めた瞬間に「わぁきれいになった!」とダイレクトに気持ちが伝わってくるので、それはやっていて良かったなと思います。
どうだろうな。誰でもできるんじゃないかな。悪い人じゃなきゃ(笑)。
営業的にはすごく楽。楽というと語弊はありますが、一般的には「営業」というと、潜在しているニーズを顕在化させて成約に繋げるものが多いですよね。でも、潜在的なニーズを顕在化させるのが一番難しい。今の営業は、「障子が破れているので直したい」という明確な顕在的ニーズがあるわけですから。あとは価格で勝負しないで、お客様のご自宅の雰囲気や空間に合わせて提案をさせていただく。たぶん、そういう意味では誰にでもできるのかな、と考えています。
研修で基本的なところは教えてくれますし、バックアップ体制としてSV(スーパーバイザー)もいるし、オーナーさんのサイトもあります。そういうところでは、困ったことがあっても、何とかなるんじゃないかと思います。誠意をもって貼り替えれば、お客様は喜んでくださるので。
前職時代、メーカー直の営業から転籍して給料がすごく下がったんですよ。それからリストラになって、再就職しても前職以上の給料はおそらく見込めません。そうすると食っていけないなという不安は正直ありました。独立した理由はそこにあります。仕事自体もきついですけどね。労働時間は倍くらいになっているのでは? 注文が集中したり納期が迫っているときには帰れない日もありますし……。
年末は、昼間にお客さまのところに行ってから、帰ってきて夜に作業。そうすると家に帰る時間がなくて、週2日はここに泊まっていました。
とは言え、それだけ多くの注文いただけていることに感謝しています。
考えてないですね。この仕事に定年はありませんから、細く長くできたらいいかな……と。子どもたちが家を出て、手がかからなくなったら、カミさんと二人でのんびりと続けたいなと思っています。
大学2年と高校2年と中学2年です。
そうそう。あと10年くらいは……。最初、カミさんは反対していました。「今の家にふすまや障子なんかないでしょ」「需要あるの? 大丈夫なの?」……と。ですが、フタを開けてみたら30~40年経ったお宅からの依頼が多くありました。そう考えると、私が仕事をしていられる、あと10~20年くらいは需要があるのかなと予想しています。10~20年したら、私も70歳を過ぎていますので、体が動かないでしょうし……(笑)。
忙しくしている私を見るに見かねて11月ごろからはカミさんも手伝ってくれるようになりました。本部の技術研修にも行ってもらって、作業を覚えてもらいました。カミさんには、障子や網戸を剥がして洗うという下処理などをやってもらっています。彼女は貼り替えもできますから、押し入れの裏側の雲花紙(うんかし)と呼ばれる部分は、貼ってくれたりしています。
そうだといいんですが(笑)。
とりあえず家族みんなが食っていけるだけこの仕事で続けられたらいいかなと思っています。そんなに大金持ちになろうとは思ってないですね。「何千万も稼ぐ気だったらウチではないよ」とは、金沢屋の最初の説明会でも伝えられていましたから。
説明会は集団ではなく個別でした。問い合わせをしたら本部に来てくれという話になって、そのまま個別で事業の説明をされました。 その後、開業している方の話を聞いたんですけど、「お客様に喜んでもらえる、こんなに楽しい仕事はないから辞めない」とお話していたのが印象に残りました。じゃあやってみようかなって……。
最初の2ヶ月は、収支がプラマイゼロ。私は焦っていたんですけど、カミさんが「そんな一月二月で儲かるようだったら皆がやっているよ」と言ってくれまして、そこは助けられました。それで、3か月目には利益が50万ほどになりました。
前職時の給料よりは高くなったので、ほっとしました。
ただ、まず始めて一年間はどういうものかを知るだけで、今の仕事をどのようにマネジメントするかと言うまでには至っていませんから、そこが今後の課題ですね。
直した枠がきれいに仕上がっていると、見えないところでの自己満足があります。感覚的にはプラモデル組み立てているみたいなものでしょうか?
きれいに貼り替えなきゃいけないのは当たり前なので、最低限の努力は当たり前。そのうえでのプラスアルファが「やりがい」になってくるのでしょう。
紙を間違えて注文してまったり……。修理の際、はじめにふすま紙を全部切るんですけど、大きさを間違えて切ってしまって「もう納期に間に合わない!」ってこともありました(笑)。
失敗を雨で助けられたこともあります。雨だと濡れてしまうので、ふすまとか障子は納品できないんですよ。勝手がわからない最初のころ、枚数は関係なく順番に1日4件程度ずつ納品と見積もりを入れていたら、とてもじゃないけど作業が追いつかなくなってしまい……。そしたらちょうど雨降ってくれたので、お客さまに「ごめんなさい!」と、納品日をずらしてもらいました。
そのとおりです。作業もそうですが、納品時のほうがより大きく天候と関係します。障子やふすまは雨に濡らしたらダメなんですよ。網戸なんかは、雨が降っていてもお客さまが良ければ納品しても大丈夫。
とくにふすまは、雨だと良くないです。あるとき、小雨がパラパラと降ったりやんだりする微妙な日があって、そういうとき、「納品はダメだとしても、引き上げるのはどうなんでしょうか?」と念のためSV(スーパーバイザー)に聞くと「濡らさないほうが良い」とアドバイスを受けました。
障子は水をかけて紙を剥がして、その後洗うから濡れてもいいですけど、ふすまは枠が歪んだり、しなってしまうから……とのこと。ふすまには、和室側がふすまで反対側が化粧板というタイプもあります。そういうものが古くなれば、端側が剥がれたりするんですよ。だから、濡らすと良くないわけです。
藤沢でラグビーのコーチをやっているので、日曜日の午前中はだいたい今担当している小学校1年生の子たちに遊んでもらっています(笑)。
好きですよ。
自由度が高いところです。他はどうかわからないですが、コンビニの話だと、ルールがしっかり決まっていて、24時間営業をしなくちゃいけないとか、それなのにアルバイトが足りなくて廃業しちゃうとか……そういうことがあると聞いています。金沢屋はそのへんの厳しさはないので、やりやすいのかな?
60歳を過ぎて、今みたいな仕事量をこなせと言われても体力的にきついものがありますが、そのときには、そんなにお金も要らなくなっているでしょうから、ライフスタイルに合わせて仕事量を調整したい。そういう調整がしやすいってところが一番ですね。
あと、サラリーマンのときは、カミさんと一緒に働くなんて考えもしなかったのですが、今では手伝ってくれたりもして……。私がお客さまのところへ行って帰ってきたら、作業場でカミさんが障子や網戸を洗っていてくれたりするのを見ると、なんかホッとするんですよ。歳を取っても、そんな風にのんびり二人が食うくらい稼げれば良いかなと思っています。